2. 全体像の理解:サンローランを支える「3つのアイデンティティ」

サンローランのデザインには、必ず「反逆心」と「気品」が同居しています。全体像を理解するための3つのポイントを整理しましょう。

① 「ル・スモーキング」:女性にパンツスタイルを

1966年、創業者イヴ・サンローランは、男性用の礼服だったタキシードを女性用(ル・スモーキング)として発表しました。当時、女性が公の場でパンツを履くことはタブーに近かったのですが、彼は**「女性を解放し、自信を与えるための服」**を作り続けました。この「強くて美しい女性像」がブランドの核です。

② モードとストリートの架け橋

彼は「高級な服は上流階級だけのもの」という常識を壊し、若者文化やアート(ピカソやモンドリアンなど)を積極的にデザインに取り入れました。世界で初めて「既製服(リヴ・ゴーシュ)」のブティックを開いたのも彼であり、高級ブランドを身近な存在に変えた先駆者なのです。

③ 時代を象徴するロゴとミニマリズム

現在のサンローランは、エディ・スリマンやアンソニー・ヴァカレロといったデザイナーにより、さらに洗練された「ロックでミニマルなイメージ」が強まりました。装飾を削ぎ落とした黒(ブラック)の美しさは、世界一と言っても過言ではありません。

初心者がまず覚えるべき「サンローラン 3大アイコンバッグ」

バッグ名特徴イメージ
カサンドラ
(Cassandra)
「YSL」ロゴが中央に。クラシックで気品のある形。フォーマル、パーティー、正統派
ル・サンカセット
(Le 5 à 7)
脇に抱えるホーボー型。「17時から19時(仕事帰り)」が由来。トレンド、カジュアルアップ、洗練
ルー
(Lou)
キルティングのカメラバッグ。タッセル飾りが特徴。デイリー、旅行、初心者におすすめ

3. 基本用語・概念のやさしい解説

サンローランを語る上で避けて通れない用語を、身近なたとえ話で解説します。

● カカンドラロゴ (Cassandra Logo)

たとえ話: 「Y、S、Lの3文字が縦に絡み合う魔法のマーク。1961年にグラフィックデザイナーのカサンドラ氏が考案したこのロゴは、時代を超えてサンローランを語る上での『聖印』のようなものです」

ブランド名が「サンローラン」に変更された今も、このYSLロゴはバッグやアクセサリーで主役として輝き続けています。

● モングラム (Monogram)

多くのブランドのモノグラムは「柄」を指しますが、サンローランで「モノグラム」と言えば、主に**「YSLロゴが配置されたシリーズ」**を指します。特にV字型のステッチ(キルティング)を施した「マテラッセ」との組み合わせは、ブランドの定番中の定番です。

● リヴ・ゴーシュ (Rive Gauche)

パリの「セーヌ川左岸」のこと。伝統的な右岸に対し、左岸は自由で知的な若者の街。サンローランがここから既製服(プレタポルテ)を始めたことに敬意を表し、現在でもロゴトートバッグなどの名称に使われています。

💡 初心者が混乱する「YSLとサンローラン」の違い

「イヴ・サンローラン」と「サンローラン」、何が違うの?とよく聞かれます。 結論から言うと、**「コスメ・香水はイヴ・サンローラン」「アパレル・バッグはサンローラン」**と呼び分けられています。2012年にデザインの天才エディ・スリマンが、アパレル部門の名称をよりモダンな「サンローラン(SAINT LAURENT PARIS)」へ変更したためです。

4. まとめ:初心者がまずやるべきこと

サンローランのモードな世界へ足を踏み入れるための、具体的アクションです。

  • 1「黒」の質感を見比べる: サンローランは黒のスペシャリストです。マットな革、ツヤのある革、クロコ型押し。同じ黒でもこれほど表情が違うのかという驚きを店頭で体験してください。
  • 2「カサンドラロゴ」のアクセサリーから入る: ブローチやピアス、ベルト。小さなYSLロゴを一つ身につけるだけで、シンプルなシャツやジャケットが見違えるほど引き締まります。
  • 3映画『イヴ・サンローラン』を観る: 彼がどれほど繊細で、どれほどの情熱を美しさに捧げたか。その生涯を知ると、手元にあるバッグがただの道具ではなく、一人の天才の遺産に感じられるはずです。

【最初のアクション】

まずは「ロゴ付きのチェーンバッグ」を一つチェックしてみてください。サンローランのチェーンは他ブランドに比べて少し重厚で、ジュエリーのような輝きがあります。デニムにTシャツ、その上にサンローランのバッグを掛ける。それだけで「完成されたモード」が手に入る感覚を味わってみてほしいのです。

5. 次に学ぶと理解が深まる関連トピック

サンローランをより深く愛するための学習テーマです。

  • エディ・スリマンの革命: 彼がいかにしてブランドを「若返らせた」のか。
  • マジョレル庭園(マラケシュ): イヴが愛し、現在は彼の遺灰が眠るモロッコの美しい庭園。
  • サクレ・クール寺院とモンマルトル: サンローランが愛したパリの風景と、デザインへの影響。
  • ライダースジャケットの美学: サンローランのメンズ・レディース共通の「究極の定番」について。